2014.02.28

French Shrinerの幻

非道い。
あんまりだ。
こんな残酷な仕打ちがあっていいものか。
俺の純粋な気持ちを弄び踏みにじったこの鬼畜の所業を、
俺は生涯忘れまい。

まあ、そんな感じで…
タイトル見て来て下さった筋金入りのアメリカ古靴フリークの方々、
ちょっと俺の愚痴を聞いてやっちゃあくれませんか。
めっちゃくちゃ長いけどね。
続きは以下。



ちょっと前のブログで「物欲は収まりつつあり」とか抜かした
舌の根も乾かぬ内にお恥ずかしい限りなのですが、
ある日のヤフオクですげーFlorsheimを見つけたので
落とすべくガッツリマーク張ってたんですよ。


53049ac81cb43.jpg


Florsheimフリークの方だったら、
この二列の出し縫い(ソール外周を囲むステッチ)を見ただけで
物凄いレアもんだってことがお分かりでしょう。
推定30s。状態は悪いんですが、これはそうそう出てこない。
オールソール前提としてまあ2万以内くらいで落とせればいいかな…とか考えていて
(技術面とかコンディション面でオールソール可能なのかどうかはこの際考えない)
事実落札30分前くらいまでは13kくらいで留まってたんですが。
案の定そこから怒涛の入札攻勢が始まりまして、
あっという間に4万オーバーからの5万超コース…

出せねえ…いくらレアでもこの状態に5万は出せねえ…。

ということで、泣く泣く断念。
この人が他にも出していたアバクロとマイティーマックのダブルネームの
カバーオールとかも余裕があれば…くらいにまで考えてたのに
まさかの一つも落とせない事態に。

この商品に関しては縁がなかったと諦めるにしても、
火が着いてしまった購買意欲はもう止められなくなってしまい。

「くっそー!!こうなりゃこれに並ぶくらいの
掘り出しもん探し当ててやらぁ!!(予算の範囲内で)」

とばかりに、往年の良質な靴メーカーを片っ端から検索バーに放り込んで捜索開始。
結局ヤフオクではいいものがなく、セカイモン経由でebayへと舞台を移行。
Johnston&Murphy、Foot So Port、Wright、Weyenberg、Nunn Bush…
様々なメーカー名を入れて調べては消しを繰り返す中で、
何となく存在だけは認識していた程度のメーカーである
「French Shriner」を入れて出てきた靴を見た時、俺の手は止まりました。


無題g


最初に見たのはこの画像(原寸大)なんですけど。
このサイズの画像でもある程度の情報は読み取れるわけです。
一番分かりやすいのはダブテイルのヒール。
(ラバーとレザーを組み木状に斜めに合わせたヒールのトップピースのこと)
アメリカ靴って古いものでも一般ランクの靴はラバーヒールのものが多くて、
こういうちゃんとレザーを積み上げたヒールってだけで
ある程度以上のランクであることは想像が付きます。
(リペア後交換したって可能性もありますけど)
そしてこのレザーの感じ、あまり丁寧に磨かれてはいないけど
質の良いしっとり感を想起させる鈍い艶。
そしてなんと言っても目を引いたのがこのデザイン、
ロングウィングとして基本的には普通に作られている中で
付き物のつま先のブローグ(飾り穴)だけが何故か無い。これは珍しい!
サイズは9Mとあり、
アメリカ靴なのに見慣れないウィズ表記が気になるところではあるのですが、
ソール幅や甲の高さから見るにごく普通のウィズ、MediamのMであろうと判断。
ここでebayの本ページに飛び、拡大画像をチェック。


$T2eC16dHJHIFFhgM8zh5BRYlUJLOdQ~~60_57


レザーの質感に関しては多分間違いなし。
このシワ、いい(ドラマ版孤独のグルメ風に)
たまに俺こういう言い方しますけど、
いいシワって何ぞ?と思われる方もいらっしゃるでしょうが、
何と説明したら良いものかなー。
細かく均一に入りつつ、シワの一山一山に瑞々しさがあるというかな。
とにかく、質の悪い革だとこうはいかないわけです。

そしてソール。


$T2eC16hHJF8E9nnC9cJSBRYlVW2jlQ~~60_57


ヤバい(確信)
この出し縫いのピッチの細かさ。分かる人には分かる。
ここ、時代や価格帯で一番差が出てくるところと言えるかも知れません。
実際ここって、こんな細かく縫わなくても強度的には問題ないんです。
じゃあ何故こんなに細かく縫うのかと言えば、そっちの方が綺麗だから。
職人の魂がこの出し縫いにこもっているのですよ。

そして最後に気になるお値段の方はというと

US74.95ドル(7,756円)即決

数え役満!


IMG_1374.jpg

IMG_1375.jpg


落とさいでか!
つーわけでサクッと落札。

ここでFrench Shrinerの歴史の話でも。
とは言っても、詳しいことは全て受け売りになってしまうので
こちらの方のブログを御覧下さい(いつも勝手にリンクして申し訳ありません)
創業者のフレンチさんとシュライナーさんの名前から
付けられた社名であり、フランスとは何の関係もなく
れっきとしたアメリカのシューメーカーです。
(創業当時は「French Shriner&Urner」という社名だったのですが
50年代にUrner氏の死に伴い「French Shriner」表記に変わったそうなので
その辺である程度の年代判別が可能になりますね)
1881年創業という非常に長い歴史を持つメーカーながら、
現在は完全に安価な靴のみにシフトして存続している模様。
ちなみにこちらが現在の公式サイト。

http://www.frenchshriner.com/

さて、何せ海外オークションだから届くまでに時間がかかるわけですよ。
落としてからずーっとソワソワしっぱなしで、いても立ってもいられず
ネットでひたすらFrench Shrinerのことを調べまくっていたところ、
今回の商品ページの画像では分からなかった部分で
ちょっと凄いディテールがあるかも知れないことが分かったのです。

まず、色々なFrench Shrinerの靴を見ていくうちに、今回落札した
ロングウイングとほぼ同じ仕様のものをいくつか発見できまして。
そのうちの一つがこれ。


614640930_o.jpg 614640976_o.jpg


トゥに普通にブローグあり、ストームウェルト、ヒールはVクリート仕様と
俺が落としたものと多少の違いはありますが
アッパーの基本的なデザインは全く一緒ですね。
カラス仕上げが剥げた感じのソールも極めて近い雰囲気。
んで、これのどこが凄いのかというと


614641088_o.jpg


ライニング表記が手書きなんですよ!

シューホリックの方々ならお分かりでしょう。
今も昔も、手書きライナーは最上級ラインの証。

ダブテイルのヒールって点ではこれが近いかも。


frenchshrinersritzwingt.jpg frenchshrinersritzwingt (1)

frenchshrinersritzwingt (2)


デザインは違いますけどソールの雰囲気は一緒ですね。
これもやっぱりライナーの手書き文字が見えます。
つまるところ、俺の落としたものはこれらと同一のラインであり、
同一のラインならば手書きライナーであり、
手書きライナーならばそれは当時の最上級ラインであったという
可能性が非常に高いわけです。

上で紹介したウイングチップは60年代のものとして
ebayに出品されていたものなのですが、
この時期は、Florsheimが通常ラインと分けて
Imperialラインを設けた時期と重なります。
効率化&低価格化の波が押し寄せたこの時期、French Shrinerでも恐らく
「全部が全部今までのやり方で作ってたんじゃやってけねえから
ラインを分けて、通常ラインは効率重視で作って
昔ながらの靴は高級ラインで作ることにすんべ」
みたいな決定がなされたのではないかと考えられます。
(ていうか、50年代以前になるとヒールがグッドイヤーのラバーヒールの
ものが多いので、ある意味昔より豪華な仕様と言えなくもない)


614641055_o.jpg


このインソックのロゴマークの下に書かれた「HERITAGE」が
その高級ラインの名前だったとするならば、
この靴は、変わりゆく時代の中で
自分たちが持つ技術を後世に伝える「遺産」なんだという
職人たちの意志の現れなんじゃないかという考えも浮かんできて
何だか感慨深くなってしまいます。

…と、以上ほぼ俺の想像なんですが、
そうせざるを得ないほどに情報がないんです、このメーカー。
手書きライナーとかもっと色んなシューホリックさん達が
話題にしても良さそうなもんなのに。
海外のファッションフォーラムに僅かに存在するスレッドとか見ても
伸びてないし、「まだあったのが驚きだよ」とか書かれてるし。
オークションの値段見るとどれもこれもすげー安いし。
(40年代以前とかのスペシャルな奴は別として)
少なくともこのラインの品質は非常に確かなもんだと思うのですが、
向こうの人にとっちゃとことん影の薄いメーカーなんでしょうなぁ。


そーんな凄いものの可能性が高まっちゃったもんだから
もうワクワクは最高潮。
とりあえずまずは出品者がセカイモンの事務所にブツを送ってきて、
係員が商品をチェックしてその結果をメールしてくれるはずだ。
まだかなまだかな~。

\チーン/

(最近PC買い替えに伴いiTunesをリセットしたので
デフォルトに戻ってしまったiPhoneの着信音)

お、来た来たー!

【セカイモン】取引キャンセルのお知らせ

お、そうか、問題ねえか!?いつ発送だ!?
ん、なに?
キャンセル?


『2014年02月24日に落札されました当商品の出品者より、
商品説明とは間違った商品を出品していたとの理由で返金がありました。
上記理由から、お客様への発送が困難であると判断した為、
今回のお取引をキャンセルとさせていただきます。』


( ゚д゚)…


( ゚д゚)……


( ゚д゚)………


( ゚д゚ )



Vulgar Display of Power


ファッキンホスターーーーーーーイル!!!





なーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!

金なんて返してもらったって意味ねえんだよ!!!
俺はこのFrench Shrinerが欲しいんだよ!!
この数日一体俺がどんな思いで、
この、
俺の、
燃え滾る、
物欲を、
どこにぶつけりゃ
いいって
いうん
じゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!
ばっちきしょうめええええええええええええええええ!!!!

つうわけで!
ったくもう!
ぶつけて来てやりましたよ!ぷんぷん!


IMG_1388.jpg


ANATOMICA SAPPOROに入荷していたアメリカ製デッドストックシャツ。
今はもう使われていない工場で90年代に作られたシャツで、
アメリカのオックスフォードシャツのいいところが全部詰まってるんだってさ。
あそこ周辺の店員さんは本当セールストーク上手いよなぁ。
言っとくけどこれ、別に無計画な買い物じゃないんだからね!
今着てるシャツの襟がほつれてきてるし近いうちに買わなきゃなーって
思ってたのがちょっと近くなっただけなんだからね!!


…はぁ。
という訳でですね。
ここまで読んでくださった方、長々とお付き合い頂き有難うございました。
本当ね、ガッカリですよもう…
今回のこのクッソ長い記事だってね、落としてから色々調べて
すげえ情報が明らかになってきて、もう届くの待ちきれなくて
とりあえずブログだけでも書き進めておこうと思って
毎日毎日シコシコと書き溜めていった結果なんですよ。
結局ブツは届かないわけだから、これもうpしようかどうか迷ったけど
French Shrinerのことについて考察してるブログなんてほとんど無いから
他のアメリカ靴好きの皆さんの参考になればなと思って
ちょっと手直しして上げることにしたわけです。
本当、欲しかったなぁ…これ…

アメリカ靴は大好きだけれども、
アメリカ人は信用ならん。
そう痛感させられた一件でありましたとさ。





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この記事へのコメント
なおきさん、こんにちは。

色々と残念でしたね。
Florshiemのオークションは私も見ていましたが、レア物とはいえ、コンディションから考えると、なおきさんの言われるように2万円くらいが相場だと思います。

FrenchShrinerは多くは見ていませんが、古い物は良いつくりですね。数が出てこないので、あまり話題に上がらないのだと思います。

私もオークションで競り負けたり、古着店でタッチの差での買い逃しは数多くありますが、そういう時は縁が無かったと諦めます。ちょっと引きずったりしますが(笑)

あとオークションは写真が下手な出品の方が価格が上がりにくいようです。確実にモノが判っている場合はお得です。

Posted by TOORI at 2014.02.28 07:54 | 編集
TOORIさん、コメントありがとうございます。
まあやっぱ2万くらいが限度ですよね。
オークションでの取り逃がしはまあ、自分が折れた結果なので諦めも付くんですが、今回みたく相手に一方的に取り下げられたのは非常に尾を引きますね…(笑)

写真の上手い下手、ありますね!
時々こいつ本当に売る気あんのかってくらいやる気のない写真とかあったりします(笑)
最近そういうのを見抜く眼力はちょっと付いてきたかなって自信はあるんですよ。
まあそういうのも俺だけじゃないんで結局争いになるんですけどね…(笑)
Posted by なおき at 2014.02.28 23:18 | 編集
こんにちは。N.O.S. w/box の europeanblend です。

いつも拝見しています。

放置状態のブログにリンクをつけて頂き、ありがとうございます。

French Shriner、良いですよね。
私もあまり出会えていないのですが、所有している中に、この手書きのヘリテージラインのものが1足あります。

わざわざ"Heritage"とありますし、極端に古そうにも見えないんで、年代的には60sだと思うんですが、作り・革質とも申し分ないです。

U.S.shoe社に吸収された70s以降(?)の French Shriner は残念な感じになってしまいますが。。。

これからも更新楽しみにしています。
Posted by europeanblend(N.O.S. w/box) at 2014.04.04 11:26 | 編集
うわー!初めまして!コメント頂けて光栄です!
そしていつも勝手にリンクさせて頂いて申し訳ありません!
以前からブログを拝見させて頂いており、その素晴らしいコレクションと豊富な知識量はずっと憧れでありました。
Heritageお持ちなんですねー。お忙しいかとも思われますが、また更新を再開された際にはその靴も是非紹介して頂きたいです。
まだまだこの手の知識に関してはひよっ子の私、この先トンチンカンなことも書くかも知れませんが、その際には是非ご指導頂ければと思います。
Posted by なおき at 2014.04.05 14:00 | 編集
なおきさん、はじめまして。
靴好きの一人です。

French Shrinerって、名前が格好いいですよね(笑)。
自分の中ではこれとEdwin Clappが格好いい名前のベスト2です(笑)。

私の調べた限りでは、French Shriner & UrnerからUrnerが取れるのが1950年前後のようです。
鳥が羽を広げているようなロゴはそれ以降も使われてUrnerが入っていますが、
中敷きなどの表記からはUrnerが見られなくなります。

HeritageラインはUrnerが取れた直後くらいからのラインで、
1951年くらいから1960年代まで見られるようです。

個人の調べ得た範囲なので間違いもあるかもしれませんがご容赦ください。
Posted by Mi at 2014.05.08 10:48 | 編集
Miさん初めまして。コメントありがとうございます!

French Shrinerは確かに格好良いですね。
「おーっとここで決まったフレンチシュライナー!!」
とか
「そう…それがアイツが"フレンチシュライナー"と呼ばれる所以だ」
みたいな…(何を言ってるんだ)
Edwin Crappは単純にいつか欲しいメーカーの1つですね。
品質高いって聞きますからね~。

そして詳細な情報ありがとうございます。
未だにFrench Shrinerはちょいちょい検索かけちゃうんですよ。
つくづくこの時買えなかったのが惜しいなぁと…
Urner入りの時期のは当然品質も素晴らしいでしょうし魅力的なんですが、緩やかに大量生産に流れつつもクオリティを保とうと頑張っていたであろうHeritage期のが個人的には欲しいですね。いずれはいいのを見つけたい…
また何か知ってる情報があればご教授下さいませ。
Posted by なおき at 2014.05.09 00:28 | 編集
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