2016.03.23

Sugiにまつわるよもやま話 その3 ~素材について~

よもやま話3回目の今回は、
Naoちゃんを形作る素材についてお話ししたいと思います。
ウンチクをひたすらダラダラ語るので長くなると思ったら
案の定クッソ長くなったので今回はボディ材の話だけ。
お暇な方はお付き合い下さい。
続きは以下。



Naoちゃんのボディは表裏で二層構造になっており
表側(トップ)は"イースタン・カーリー・メイプル"
裏側(バック)は"ホンジュラス・マホガニー"という木が用いられています。

イースタンカーリーメイプルというのは
正確な樹種の名前ではなくギター材としての呼び名で
"イースタンメイプル"の"カーリー(トラ杢)"の入ったもの、
という意味合いの名前になります。
んでこのイースタンメイプルというのも
大雑把には北米大陸の北東部で採れるメイプル(カエデ)材のことですが
その中でもイースタンシュガーメイプルと
イースタンレッドメイプルというのがあり、
前者は一般的に「ハードロックメイプル」「ハードメイプル」と呼ばれるもの、
後者は「ソフトメイプル」と呼ばれるものに属します。

ギターのトップ材に用いられる杢入りのメイプルといえば
真っ直ぐな杢が平行に細かく入るフレイムメイプルや
ウロコ状の杢が入るキルテッドメイプルなどがありますが
これらは基本的にソフトメイプルです。


IMG_3849.jpg フレイムメイプルを使ったSugi


IMG_3946.jpg キルテッドメイプルを使ったひろともさんのSugi


このような杢は、木が外的要因で曲がったり圧縮されたりして
生まれるものなので、もともと硬いハードメイプルには
そういうトラ杢は現れづらいということでしょうかね。
つまるところ、トラ杢の入ったハードメイプルはレアなんです。
ちなみに、バーズアイメイプルは基本的にハードメイプルらしいです。
ソフトメイプルにも出るらしいですが定かではありません。


IMG_3444.jpg バーズアイメイプルを使ったSugi


ギター界に於いてイースタンメイプルと言えば
1958~60年の間に作られた
ギブソン・レスポール・スタンダードのサンバーストモデル、
通称「バースト」のトップ材として広く知られています。
このへんのギターをご覧下さい。
んで、当時のギブソンはイースタンメイプルと呼ばれる中の
ハードとソフトのどちらのメイプルを使っていたのかというと
実際はどっちも使っていたという話なのですが、一般的には
「バーストのトップはハードメイプル」というのが定説となっており、
巷で様々なメーカーが製造している気合いの入ったバーストコピーものや
現在本家ギブソンが製造しているヒストリックコレクションなんかは
ハードメイプルをトップに使うのがお約束となっています。
んで、Sugiもそのお約束に則って
「イースタンカーリーメイプル」として仕入れてくるものは
トラ杢の入ったハードロックメイプルです。
この材に関する話はここに詳しく書かれています。
杉本さんの肉声での語りも聴けます。

実を言うと、先日ご紹介した初期案では
フレイムメイプルを使おうと思っていたのです。
しかし、柄を使った案を取り止めにして
青一色のトップになった段階で
ひとつのコンセプトを思いつきまして。
ハワイ生まれのシャツから採った青を用いるなら
ボディトップをハワイの海に見立てたい。
トップが海なら、杢は波だ。
となると、フレイムの真っ直ぐで平行な杢はちょっと違う。
キルトも波って感じじゃない。

求めるのは、フレイムのような横への広がりがありつつ
キルトのような乱れ感を少し加えたような杢。
そうなってくると、やや荒れたトラ杢が特徴である
イースタンカーリーメイプルしかないだろうと。


IMG_3556.jpg こういうの


因みに、「Nao」という名前を考えたのはこれと同時期でした。
せっかくの自分モデル、何か名前を付けてあげたい。
ハワイに因んだ仕様だから、ハワイ語がいいだろう。
ハワイ語で何か、水関係とか涼し気な感じとか
そういう意味合いの言葉はないものか…
と考え、ハワイ語の単語一覧をつらつらと眺めていたら
「Nao:さざ波」
というこれ以上ない単語が出てきまして。
だって俺の名前なおきだし。杢の感じに繋げることもできるし。
という感じで名付けられたわけです。

というわけで、材を選ばせて欲しいと頼んだところ
基本的にはHPのリストにある中から選ぶとのことだったのですが
(現在は俺が選んだ当時とはまたちょっと違っていて
ラインナップがちょっと減ってます)
今ひとつピンと来るものが無かったので、
「本当はもっと色々工房にあるんだルォォ?隠してないで出せよォォン!?」
ってな感じで(うそです)3枚ほどピックアップしてもらいました。

1枚目。


IMG_3493.jpg


全体のムラの無さは悪くないけど…
ちょっと薄い。

2枚目。


IMG_3494.jpg


杢の深さはいいけど…決め手に欠ける感。
フレック(入り皮。ちょこちょこ縦に入ってる黒い筋)多すぎて何か汚いし。

3枚目。


IMG_3495.jpg


よっしゃこれだァーッ!!

杢の深さ、ムラの無さ共に申し分無し。
フレックの入り方も雰囲気バッチリ!
というわけで即決採用。

フレックについてちょっとお話しておくと
これはハードメイプルのトップ材によく見られるもので
これがちょっと入ってると雰囲気が出るってことで
好事家に珍重されるスペックの一つです。
木材としてのクオリティを重視するなら入ってない方がいいんでしょうが。
ハードメイプルの特徴って思われてる方も多いようですが
実際はソフトメイプルにも入るそうです。
しかし、ギターのトップ材になるようなランクのソフトメイプルには
フレックの入ったようなものは選ばれないでしょうから
実際問題としてフレックが入ってれば概ねハードメイプルと見て
間違いはないかと思われます。

話が逸れましたが、この材。
2014年に長野県の島村楽器松本パルコ店で開催された
オーダー会で出た木材のうちの一つのようです。
http://matsumoto.shimablo.com/entry/2014/06/30/211500
ここの22番。
ブログ内ではエキゾチックメイプルとして紹介されていますが
木材にはイースタンカーリーメイプルの表記があります。
Naoちゃんの完成バージョンとはブックマッチが逆になってますね。


IMG_3496.jpg


結局この材はHPのリストには載せられず
工房で1年近く眠ってたわけですが、
木材との出会いって買い付けのタイミングもあるし本当難しくって
つくづくこの材と出会えてよかったと思っています。


ここで一旦ホンジュラスマホガニーに話を移します。
世の中に「マホガニー」を使ったギターやベースは山程ありますが
その表記は、Naoちゃんのように「ホンジュラスマホガニー」であったり
「アフリカンマホガニー」、はたまた只の「マホガニー」であったり様々です。
結局何が違うのか?
マホガニーって一体何なんだ?
そう思う方も多いかと思われます。

ノリのいい文体で楽しませてくれる木フェチブログでおなじみ
FINEWOODさんのこちらのコラムに詳しく書いてありますが
結論から言ってしまうと、本物のマホガニーと呼べるのは
キューバ共和国周辺を原産地とする「キューバンマホガニー」のみだそうです。
しかしながら、キューバンマホガニーは20世紀にはもう資源が枯渇しており
その代替材として流通し始めたのがホンジュラスマホガニーです。
んで、現在ではそのホンジュラスマホガニーも伐採によって希少になり
ワシントン条約によって流通が規制されています。
そこでさらなる代替材として用いられ始めたのが「アフリカンマホガニー」であり
現在「マホガニー」とだけ表記されているものの多くはこれが使われています。
しかししかし、そのアフリカンマホガニーもまた現在は伐採によって
良質のものは数が減ってきており…
って、どんだけ繰り返すねん!!
っちゅー話ですよ。
使ってる上に何もしてない自分が言うのも何ですが、
本当楽器ってのは限りある資源で作られているもんだと実感します。

代替材ってことは音は劣るのか?
っつーとそんなことはなく、ホンマホもアフマホも同様に優れたトーンウッドです。
むしろ最近はホンマホの良質なものを確保するのが著しく難しくなっているらしく
アフマホの良いのを使った方がよっぽど良いって話もあります。

とはいえ自分も木フェチの端くれ、
どうせ使えるんだったら貴重なホンマホ使いたいよねってことで
Naoちゃんには30年じっくりシーズニングされたホンマホが使われています。
この30年ホンマホ、2013年頃からSugiで使われていたのは知っていて
まだ在庫があるかどうか問い合わせてみたところ、まだあるとのことで
今回採用となりました。流石に1ピースの材はもうなかったけどね。
因みにSugiではアメリカのアクアティンバー社という会社が販売している
どこぞの湖にずっと沈んでいた古材をサルベージした
アクアティンバーマホガニーというのもオプションで用いることができるのですが、
そっちは何かいつでも使えそうなので今回は30年にしました。
バックのカラーをナチュラルにしたのは、近年流行りの仕上げってのもありますが
この貴重なホンマホを見せびらかしたかったってのが一番だったりします。

で、バーストでお馴染みこのホンジュラスマホガニーと
イースタンメイプル(ハードメイプル)の組み合わせについて、
一般的には中低域の太さを担うマホガニーと高域とアタック感を担うメイプルで
お互いの不足するところを補ったゴールデンコンビ、というような
認識がなされているものと思われますが、
色々調べているといくつか面白い話が出てきまして。
まずはここ。

http://bribribrizauemon4ever.blog.eonet.jp/default/2008/01/post-3d7a.html

…引用しといてこんなこと言うのも何ですが
かなり胡散臭い工房なので全て鵜呑みにするのは危険な気がしますが
「メイプルのサウンドレンジはマホガニーのサウンドレンジより狭い。
マホガニーはフルレンジ」というのは興味深い話です。
俺はこの人言うところのただのバカ的認識をずっとしてきたわけですね。
そしてこれ。

http://1071.blog95.fc2.com/blog-entry-96.html

めちゃくちゃ高いけど評価も非常に高いバーストコピーを製造している
ブリルベイトという工房のブログ。
「ハードメイプルは音響的には楽器に向いている材とは言えない。
鳴るよりも音を止める効果が強い」という話。これもびっくりでしたね。
一番ギターやベースによく使われてる木なのに。(ネック材としてですが)
「ただ、レスポールのように馬鹿鳴りして暴れるマホガニーに対して
軽くコンプレッションをかけるように音をまとめてくれる効果があるため
使い方次第で優秀な楽器用の木材となる」
とも言われており。

ということで、2つの話を合わせると
優秀なトーンウッドであるフルレンジのマホガニーは
それだけだと鳴り過ぎちゃって暴れるので
メイプルで引き締めるといい感じになる、というのが
所謂「(ハード)メイプルトップ、マホガニーバック」の
組み合わせの妙味というわけなのでしょうかね。
ホントかどうか知りませんけど。


話は戻ってトップのメイプル。
本チャン用の材が決まり、
コンセプトについても工房に説明したところ、一つ忠告されまして。
メイプルなんかの杢を際立たせるための塗装技術として
素の材に塗料を刷り込む「生地着」という手法があるのですが
イースタンカーリーメイプルは硬い材なので塗料があまり染み込まず
杢が目立ちにくいのだと。
なので、杢をバキッと立たせたいならソフトメイプルの使用も
考慮に入れた方がいいかも知れないよ…と。

しかし。
今更他の材なんて選べん!
俺はもうあの材に惚れてしまったのだから。
それに過去のSugiのイースタンカーリーメイプルでの作例を見ても
割といい感じに杢が出ているし、何とかなるでしょ。
つーことで決行。


DSC_2571.jpg
IMG_3175.jpg DS02889175.jpg 過去の作例


で、カラーサンプルが上がってきて。
俺の期待は良い方に裏切られました。


IMG_3854.jpg


この出方ね。
すごいでしょ。

で、これ。
確かに角度によっては杢は大分薄くなるんです。
でも、別の角度から見るとこうなる。
つまりは、立体感が半端じゃないんです。
めっさ3Dなんです。もはや4DXです(意味不明)

普段部屋の隅っこにいるNaoちゃんは
明かりが少なく上の方から見た状態では割と地味子ちゃんです。


IMG_4213.jpg


しかし、明かりを当てて下の方から見ると
ものすごい杢がドバーンと現れる。


IMG_4214.jpg


はっきり言ってNaoちゃんのイースタンカーリーメイプルの魅力は
写真じゃ伝わりづらい。
つーことで動画をご用意しました。








この杢の動きと輝き…まさしくさざ波じゃないか!
海だ…このベースは、海だ。
俺が当初立てたコンセプトにバッチリ合う木を選ぶことができました。

個人的に素晴らしいと思うのがこの辺り。


IMG_4216.jpg


杢の下に透けるグニャグニャと歪んだ板目
これが海面の下の岩礁かサンゴ礁みたいな感じに見えません?
見えない?
見えるだろ?(威圧)

光を浴びて揺らめき輝くNaoちゃんのボディ。
つまるところ、Naoちゃんはステージの上こそが居場所ってことですなー。
早いとこ何とかしないとな。

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お久しぶりです。
FC2ブログの調子が悪く引っ越しをしたので、よろしくおねがいします。
http://ryouleather-clothes.blogspot.jp
Posted by リョウ at 2016.06.04 20:51 | 編集
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